成長ホルモン分泌不全症
あるお母さんからのお問い合わせ。
「現在5歳0ヶ月の女の子。身長94cm、体重14kgです。
3歳1ヶ月時には身長85cm、体重14kg、4歳1ヶ月には身長90cm、体重13kgでした。
これまでとくに大きな病気をしたことはありませんが、かかりつけの医師から『身長の伸びがよくないので、一度検査をしたほうがよいのでは』と言われています…」
- 検査が必要だということは病気の疑いがあるのでしょうか?
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- 高谷:
- ご相談のお子さんの場合、3歳以降の身長が低身長のめやすである〔-2SD〕以下であることから、成長ホルモンが十分に分泌されていない可能性が考えられます。
ただし、内蔵の病気、骨や軟骨の問題、染色体の問題、あるいは家族性の低身長の可能性なども考えられるので、背が低い原因を明らかにするために、いくつかの検査を行う必要があるでしょう。
成長ホルモン分泌不全症の場合、2歳以前の身長はそれほど低くないのに、2〜3歳以降に〔-2SD〕を下回り、他の子に比べて明らかに背が低くなるというパターンが多いのです。そこで病院を訪れるときは、1歳半検診以降の身長・体重の記録を持参すれば、医師が診断するうえで参考になります。
- どのような検査を受けるのでしょうか?
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- 高谷:
- 成長ホルモン分泌不全症が疑われている場合、下記に示したような流れで検査が行われます。
<成長ホルモン分泌不全が疑われる場合の検査>
- 治療が必要な低身長か?
- これまでの成長記録、出生時の状況や病歴、全身のバランスなどから総合的に判断
↓
- 低身長の原因は?
- 成長ホルモンの分泌不足が原因と考えられる場合
- 一般的な検査(血液検査・尿検査)
- 内分泌検査
- 骨年齢の評価(レントゲン)
- 染色体分析
↓
- 成長ホルモン分泌不足が疑われたら?
- 成長ホルモンがどのくらい不足しているのか、なぜ不足しているのかを、より詳しく調べる
- 成長ホルモン分泌刺激試験
- 頭部MRI
成長ホルモン分泌不全の一因となる脳腫瘍などがないかどうか、下垂体、下垂体壁の形が正常かどうかを調べる
- 睡眠時成長ホルモン分泌検査
睡眠中のホルモンの分泌状態を調べる
低身長の原因を探るための血液検査や尿検査では、糖尿病や、腎病・腎臓も異常がないかを調べます。
血液検査ではほかに、貧血の有無、栄養状態などのがチェックされます。
内分泌検査では、身長の伸びと関係の深いホルモン(甲状腺ホルモン、性ホルモン)やインスリン様成長因子-1(1GF-1)がどれだけ血液中に含まれるかを測定して成長ホルモンの分泌状態を間接的に調べたり、朝一番に採取した尿に含まれる成長ホルモンの量を測ることで睡眠中のホルモンの分泌状態を確認します。
また、レントゲン検査による骨の成熟度評価も、成長ホルモン分泌不全を調べるためには、とても大切です。
これらの検査の結果、成長ホルモン分泌不全症が疑われる場合は、成長ホルモンの分泌状態をより詳しく調べるための検査を行うことになります。
現在。この検査は6〜7種類ありますが、より正確な診断を行うために、2種類以上の検査が行われます。
入院して検査を受けていただく場合が多いのですが、病院によっては外来で行う場合もあります。
- 成長ホルモンの分泌が不足している場合、どうなるのでしょうか?
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- 高谷:
- 成長ホルモンは骨の形成や成熟に欠かせないホルモンですから、その分泌が不足している場合には、身長の伸びが悪くなります。
分泌不足の程度によっては、骨格筋(骨を動かす筋肉)が十分に強くならなかったり、低血糖が起ってくることも予測されるので、成長ホルモン補充療法が必要になります。
成長ホルモン補充療法は、できれば小学校に入る前に始めることが望ましいでしょう。
治療を始めるタイミングによっては最終的な身長に差がつくことはほとんどありませんが、多くの場合、治療開始後1〜2年間はぐんと身長が伸びるので、たとえば小学校入学までにある程度身長を伸ばしたい希望があれば、できるだけ早い時期に治療を始めると良いと思います。
身長にばかりこだわらず、お子さんの個性を伸ばすことを大切にしていただきたいと思う一方で、身長の低いことが日常生活に大きな支障をきたすようであれば治療が必要になりますので、そのあたりは主治医と十分に話し合いながら、治療への取り組みについて考えていただければと思います。